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特集
2025年10月13日
耳が聞こえない新米保育士"諦めない"思いで子どもたちと向き合う(2025年10月11日放送)
都城市高崎町にある「おおむたこども園」で、今年4月から働き始めた新米保育士・森山菜々美さん(23)。
彼女は生まれつき聴覚に障がいがあり、補聴器で聴力を補っています。
聴覚に障害のある保育士は全国的にも珍しく、県内でもほとんど前例がありません。
子どもたちと笑顔で向き合う日々
菜々美さんが担当しているのは1歳児のクラス。
子どもたちと遊びながら、一人ひとりに丁寧に声をかける姿が印象的です。
音は聞こえても、それが何の音かを判断するのは難しいため、周囲をよく観察し、子どもたちが安全に遊べているか常に目を配っています。
園では、1人の保育士が少人数の子どものお世話を全て担当する「育児担当制保育」を導入しており、菜々美さんは副担当として先輩保育士のもとで経験を積んでいます。
竹之下良子園長は「特別扱いせず、新卒の保育士として受け入れた」と話します。
子どもたちも菜々美さんの優しさに惹かれ、自然と彼女のそばに集まってくるそうです。
"聞こえない"ことを受け入れ、前へ進む
菜々美さんは都城市出身の3人兄弟の長女。
両親や兄弟に聴覚の問題はなく、生後6か月の頃に音に反応しないことから病院へ行き、先天性の"感音性難聴"と診断されました。
母親のめぐみさんは「最初は"なぜ"と思ったけど、その日のうちに"できることをやろう"と決めた」と振り返ります。
地域の中で育ってほしいという思いから、小学校は聞こえる子どもたちの通う一般校へ。
友達や支援員のサポートを受けながら学校生活を送りました。
その後、宮崎県立都城さくら聴覚支援学校へ進学。
進路を考える中で、「聴覚支援学校の卒業生の中で進学する人はほんの一握り」という現実を知りました。
それでも昔から抱いていた「保育士になりたい」という強い思いは揺らぎませんでした。
自身も現役の保育士であるめぐみさんは「最初は無理だと思った。でもやってみないで諦めるのは違う」と応援し、菜々美さんは前例のない道へと挑戦するため、大学への進学を決意しました。
大学で道を切り拓く
高校卒業後、菜々美さんは南九州大学 人間発達学部 子ども教育学科へ進学。
授業では音声を文字起こしするアプリや支援員のサポートを受けながら学び、同大学で初めて聴覚障がいがありながら保育士資格を取得しました。
現在は「おおむたこども園」で、子どもたち一人ひとりの表情を丁寧に見つめながら保育にあたっています。
保護者からは「笑顔で接してくれるので安心」「子どもの変化を丁寧によく見てくれているので安心してまかせている」と信頼の声が寄せられています。
同じ境遇の人へ伝えたい思い
菜々美さんは「後輩たちの進路の選択肢の幅を広げたかった。障がいがあるからといって諦めるのではなく、やりがいや目標を探し続けて自分の存在を認めていくことが大切。」と話します。
「子どもたちにとって安心できる、信頼される保育士になりたい」と笑顔で語る菜々美さん。
前例がないからこそ、自らその道を切り拓いていく。
森山菜々美さんの姿は、多くの人に"可能性を信じる勇気"を与えています。