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特集
2025年07月21日
映画『木の上の軍隊』公開へ - 木の上で2年間、生き抜いた男たちの実話 -(2025年07月19日放送)
太平洋戦争末期の沖縄・伊江島を舞台に、終戦を知らず木の上で2年間暮らした日本兵2人の実話をもとにした映画『木の上の軍隊』が、7月25日から全国で公開されます。
モデルとなった一人は、宮崎県小林市出身の山口静雄さん。その知られざる半生を、家族や関係者の証言をもとに辿りました。
実話をもとにした感動の物語
『木の上の軍隊』は、俳優・堤真一さんと山田裕貴さんのダブル主演でおくるヒューマンドラマ。
舞台は沖縄県伊江島。
2人の日本兵が、終戦を知らないまま木の上に身を潜め、2年間を生き抜いた実話に基づいています。
山口静雄さんは、沖縄戦で伊江島に派遣され、激戦のなかで傷を負いながらも生還した一人。
劇中で堤真一さんが演じる「山下一雄」のモデルです。
完成披露上映会は、沖縄戦から80年となる6月23日、慰霊の日に東京・新宿で行われました。
父の記憶を受け継ぐ家族の想い
静雄さんの次男・山口輝人さんは、7歳のときに終戦を迎えました。
父の帰還を待ち続け、ある日突然戻ってきた父の姿に、家族は驚きを隠せなかったといいます。
輝人さんは、父から聞いた戦争体験を克明に書き残しています。
米軍の攻撃で太ももを負傷し、木から落ち、枝で応急処置を施しながらも生き延びた日々...。
その壮絶さは、筆舌に尽くしがたいものでした。
伊江島を訪れた遺族たち
2024年11月、静雄さんの家族は、映画のロケ地・沖縄県伊江島を訪問。
戦時中に静雄さんが隠れていたガジュマルを訪れました。
伊江島では沖縄戦で日本兵約2000人、島民約1500人が犠牲となる激戦があったといいます。
ガジュマルの木は、命をつなぐ象徴として今も大切に保存されています。
「ここまで来られて感謝しています。父の2年間の生活に"お疲れ様"と伝えたい」と手を合わせる次男の輝人さん
また、もう一人のモデルである佐次田秀順さん(沖縄出身)の遺族とも初めて対面。
2人が協力し合いながら、米軍の残飯やゴミの中から食料を探す生活で命をつなぎました。
静雄さんが帰還後に生まれた三女・平春子さんは、「木の上で父が生き延びてくれたから、私がいて、子どもたち、孫たちがいる。あの出会いと生き抜いた時間が命をつないでくれた」と語り、父への感謝を噛み締めていました。
主演俳優の思いと現場の裏側
この映画は単なる戦争の再現ではありません。
極限の中でも人が希望を捨てず、生きるために支え合った日々。
生き残ることの重みと、今ある命のありがたさを描いています。
映画のセットのガジュマルの木は、実際に伊江島に生い茂る 本物のガジュマルの木 2本を組み合わせて撮影しました。
- 【話:堤真一さん】
いつの間にか木の上が安全な場所、安心する場所だと思えるようになった。この映画は生き残ることの素晴らしさを伝えられると思うが、それぞれの感じ方で受け止めてほしい。 - 【話:山田裕貴さん】
食べ物がある、水がある、家がある。これがあるだけで幸せなんだと、改めて思える映画になれば。幅広い世代の方に観てほしい。
戦後80年を迎え、戦争の記憶が風化しつつある今、命の重みを感じるきっかけになる映画『木の上の軍隊』は、7月25日から全国公開されます。