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特集
2026年01月26日
都農町が取り組む 幻の高級魚「タマカイ」養殖プロジェクト(2026年01月24日放送)
都農町といえば、県内でも農業が盛んな地域として知られています。
しかし水産業に目を向けると、漁獲量の減少や担い手不足といった深刻な課題を抱えています。
こうした現状を打開しようと、都農町が新たに挑戦しているのが、幻の高級魚「タマカイ」の陸上養殖です。
国内唯一のタマカイ養殖施設

都農町の魚港近くにある施設には、全長7メートルの大型水槽が並び、その中で育てられているのが「タマカイ」です。
タマカイは南西諸島や沖縄周辺の温暖な海域に生息するハタ科の魚で、成長すると体長3メートルを超えることもある最大級の魚として知られています。

見た目は大きく黒く迫力がありますが、実際に食べてみると、弾力のある身と脂の甘みが特徴で、特に加熱調理に向いた魚です。
皮は厚くゼラチン質が豊富で、食感の良さも魅力です。
「知る人ぞ知る美味しい魚」として評価されていますが、現在は絶滅危惧種にも指定されています。
最大の理由は過剰な漁獲や環境破壊だとされています。
都農町では現在、2基の水槽でおよそ1100匹のタマカイを養殖し、ふるさと納税の返礼品として全国へ出荷しています。
タマカイの養殖から出荷までを実現しているのは、国内で唯一この都農町だけです。
漁獲量減少と担い手不足という現実
この取り組みの背景には、都農町が直面する水産業の危機があります。
町によりますと、水揚げ量はこの30年間でおよそ15%にまで減少し、水揚げ高も17%、約3500万円まで落ち込みました。
さらに、漁師や漁協関係者の数は、この20年間でおよそ半分にまで減少しています。
現場の漁師からは「1日の水揚げが多くても300キロほど」「少ない日は20~30キロしかない」「若い後継者がいない」といった厳しい声が聞かれました。

こうした課題に向き合うため、都農町は「水産業夢未来プロジェクト」を立ち上げました。
従来の取る漁業から、安定した生産が可能な育てる漁業へと転換し、水産業の立て直しを目指しています。
その中で注目したのがタマカイでした。
宮崎の環境に適していること、そして世界的にも前例の少ない魚種であることから、「成功すれば都農町の新たなブランドになる」と期待を込めて選定されました。
産・官・学が連携した新たな仕組み
しかし、養殖を進めるにあたり、町には人手や管理体制、養殖ノウハウが十分にありませんでした。
そこで導入されたのが「多分野連携協定」です。

都農町はNTT、そしてタマカイの研究を行う大学と連携し、それぞれの強みを活かした体制を構築しました。
NTTはICT技術を活用し、完全閉鎖循環式の陸上養殖システムを提供。水をほとんど交換せず、ろ過・浄化しながら循環させることで、天候に左右されず、環境負荷や病気のリスクを抑えた養殖を可能にしました。
水中センサーが24時間体制で水温や酸素量を管理し、蓄積されたデータをもとに最適な育成環境を分析。安定した養殖を支えています。
大学からは、成長を促す人工海水や照明など、専門的な知見によるサポートが行われました。
自然環境に近づける工夫が、タマカイの健全な成長につながっています。
ゼロから積み上げた1年の成果

都農町が担ったのは、現場での実務です。
毎日の魚の状態確認、水質検査、設備の点検、給餌作業などを地道に積み重ねてきました。
養殖開始当初は約60グラムだったタマカイは、わずか1年で2キロにまで成長。
成長スピードは海上養殖の約3倍、生存率は94%という高い数値を記録しました。
この成果により、タマカイの完全閉鎖循環式陸上養殖は、世界で初めて成功した事例となりました。
次なる目標と都農町の未来

都農町はすでに次の段階を見据えています。
ふるさと納税を活用したクラウドファンディングでは、目標300万円に対し500万円を超える寄付が集まりました。
今後は40トン規模の水槽を新設し、生産体制の拡大を計画しています。
「都農町といえばタマカイ」と言われる存在になること、そして町民や県民に安定して提供できる新たな産業へと育てていくことが目標です。
人手不足や産業の衰退に悩む自治体が増える中、外部の技術と知識を取り入れ、それを現場に根付かせた都農町の取り組みは、新しい町おこしのモデルとして大きな可能性を示しています。





