番組表

特集
2025年12月15日
漁師を悩ませる「厄介者」から地域の希望へ(2025年12月13日放送)
川南町で広がる"サメ活用"の挑戦
漁の仕掛けを食いちぎり、漁場を荒らす存在として、宮崎県川南町の漁師たちを長年悩ませてきたサメ。

近年、川南町の近海では「ハンマーヘッドシャーク」をはじめとするサメが急増。
その原因について、沖縄美ら海水族館の佐藤圭一館長は「ここ数年は海水温が高くなる傾向があった。熱帯や温かい海を好むサメが北上した可能性がある」と話します。

主にマグロを水揚げしている川南漁港では、サメによって漁場の魚が食い荒らされ、道具は切断されるなど深刻な被害が起きている。
赤字が続く日々に漁師歴60年のベテランも「漁にならん」と肩を落とします。
さらに、サメはアンモニア臭が強く、下処理に手間がかかるうえ、値段もつかないため、多くが海へ戻されてきました。
「厄介者」を資源に変えられないか

そんな状況を打開しようと、今年1月、町や漁協、関係機関が連携協定を締結。
目指したのは、サメを"地域資源"として活用する道です。
レシピ開発を担った、川南漁港直売所「通浜」の勝本雄樹店長は「サメは軟骨魚類で骨が少なく、身はさばきやすい」と話します。
試作を重ねること約30品目。臭みをどう抑えるか、最も美味しく食べられる調理法をおよそ1年間探し続けました。
そして今年4月、ついにたどり着いたのが「サメのフライ」。
「身がふわふわで、揚げるとホクホク。フライが一番臭みが抜けた」と勝本さんは話します。
観光地・飲食店へ広がるサメ料理
10月には、町・漁協・直売所の関係者が県内有数の観光地・青島屋を訪問。
サメフライの商品化に向け、価格や提供方法について協議が行われました。
宮崎交通 店舗開発推進部の福嶋弘樹さんは「最初は正直不安だったが、食べてみたら本当においしい。熱意が伝わってきた」と語り、可能性はさらに広がりました。

また、この取り組みに共感したのが、フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー。
館内レストラン「パインテラス」では、川南町出身の料理長・齋賀雄大さんがサメ料理を考案。

ニンニクとハーブを効かせた衣のオリジナル・ハンバーガー「鱶のミニハンバーガー」は、臭みがなく、ふわふわの食感が評判です。
「料理人が頑張れば、漁師さんも頑張れるのかなと思う。まずは使い続けて、認知を広げたい」という齋賀さんの言葉通り、サメ料理は少しずつ"特別なもの"から"身近な一品"へと変わりつつあります。
「厄介者」から「人気者」へ
現在、川南町のサメを使った料理は県内各地へ拡大中。
これまで廃棄されてきた存在が、漁師の収入につながり、地域の新たな魅力になる。
SDGsの視点からも注目されるこの挑戦は、まだ始まったばかりです。
「サメって、こんなに美味しかったんだ」
そんな驚きが、川南町から少しずつ広がっています。
■通浜ブランド創出協議会事務局 0983-27-8011





