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2026年07月13日

「自分は欠陥品だと思っていた」――ADHDだからできること 不登校児らの支援団体を設立した大学生の挑戦(2026年07月11日放送)

自分はエラー品ではないか」。
学校という組織の中で「普通」を求められ、悩み続けた過去。
ADHD(注意欠如・多動症)の診断は、甲斐優太さんにとって、人生を肯定する最初の一歩だった。

自身の経験を綴った著書を出版し、大学で教育者を目指す傍ら、不登校児らの支援団体を設立。
自らの特性を「ユニークな仕様」と捉え、同じ境遇に置かれた人々へ勇気と共感を届けている。
優太さんの目に映る、多様な個性が輝く未来の景色とは。

熱意で書き上げた一冊の本

2026年2月、ある男性の幼少期からの実体験を記した一冊の本が出版された。

01 一冊の本が出版

『僕は本気で砂場を泳いだ。「普通」が無理ゲーだったので、抜け道を探した夜』
著者は宮崎国際大学に通う甲斐優太さんだ。

『自分という存在は製造ラインではじかれるべき「エラー品」であり、自分は「欠陥品」なんだと疑いもしなかった。そんな僕が今、あろうことかこうして「本」を書いている。「生き残るための戦略」を語ろうとしている。(著書より一部抜粋)』

02 甲斐優太さん

  • 甲斐優太さん:
    ADHDがどうとかではなくて「君は場所がそもそも合ってないだけの可能性もあるし、いろんな要因があるかもね」というのが伝わるといいなという思いで、この本を書かせていただきました。

本を書き上げたのは、高校生活最後の冬。
当時を知る恩師・西山正三さんは「彼の熱意がすごかった。どうすれば本を出せるのか、いろんな人に聞いたり調べたりしていた。その熱意からこうやって実現するということに驚きを隠せない」と話す。

甲斐さんを救ったADHDの診断

優太さんは小学5年生の時に、ADHDと診断された。

03 ADHD

ADHDとは発達障害の一つで、不注意(忘れ物や失くし物が多い)多動性(じっとしているのが苦手)衝動性(思い立ったら後先考えずに行動)といった特性が見られ、特性の現れ方や程度は人によって異なる。
優太さんは多動性はなく、忘れ物が多いといった不注意の特性が強く現れるという。

04 母・恵里さん

  • 母・恵里さん:
    水泳の初日に水着を忘れて行ったりとか、給食着をランドセルの上に置いているけど、それをどかしてランドセルを背負って行くから忘れ物がとにかく多くて。ずっと困っていて、担任の先生に相談するんですけど、「いや、そんなの普通ですよ。男の子はそんなもんです」というのがずっと、2年ぐらい言われたかな。

05 幼少期 甲斐優太さん

  • 甲斐優太さん:
    常に毎日怒られていた。「こんなのもできないの?」と言われるけど、なんでできていないのか分からなくて、忘れ物をしたあとに後悔する。行動すべてが自分の責任。

周りには理解されず、自分でも理由が分からぬまま後悔を繰り返す優太さんを救ったのは、病院での診断だった。

06 母・恵里さん

  • 母・恵里さん:
    診察して「優太くん、君ADHDだよ。今まで頑張ったね」と言ってくれたんですよね。そしたら(優太さんが)ボロボロと泣き出して。わあ、申し訳ないことしたなと思って。そこで初めて向き合うというか、こんな小さな子がこんなことをため込んでたんだって、ようやく分かったというか。先生からのその一言、診断名で、初めて親子共々認めてもらったという感じ。

07 甲斐優太さん

  • 甲斐優太さん:
    自分に言い訳ができるようになった。

病名がついて助かった」と話す、優太さんと恵里さん。

しかし、すべてが解決したわけではなかった。
優太さんは、うつ病や、朝起きられないなどの症状が現れる「起立性調節障害」を併発。
中学では精神科への入退院を繰り返した。

生徒会活動がもたらした転機

転機が訪れたのは高校時代だった。
宮崎東高校定時制夜間部に入学した優太さんは、1年間の休学を経て、学校へ行く理由を作るために生徒会選挙に立候補した。

08 生徒会

  • 甲斐優太さん:
    一番最初の大きな行動が生徒会選挙で、自分が当選するという成功体験ができて、今まで知っていてもしようとも思わなかったことが1つできるようになったことで、これも感覚でやってみようかなって、できるようになった。

それからの優太さんは「高校生国際シンポジウム」に出場したり、2週間のフィリピン旅行をしたりと、いろんなことに挑戦するようになった。

著書には「普通である必要なんて、1ミリもなかった」と記されている。

現在は、認知機能改善トレーニングに毎日取り組むなど、自身の特性と粘り強く向き合っている。

  • 甲斐優太さん:
    本を読むときに、1行読んだら「1行前は何だったけな」となって、もう1回見たら「あれその前はなんだっけ」となって、つながりが分からなくなる。そういうものだと思ってはいるけど、改善していきたいなって。夢というか。諦めずに頑張っていこうかなと、向き合っている。

特性を強みに変える第3の居場所

ADHDの特性は、見方を変えれば強みにもなる。

09 ピアノ

興味があることへの行動力や集中力を発揮し、ピアノを演奏する優太さん。
楽譜は読めないが、一音一音、耳を頼りにピアノの練習を重ねる。
優太さんは、新しいことを一生懸命に学ぼうとすることが自分の日常だと話す。

10 宮崎国際大学

優太さんは現在、宮崎国際大学で幼稚園教諭と小学校教諭の免許取得を目指し、苦手な勉強と向き合っている。

  • 甲斐優太さん:
    普通の人として扱われてきたんですよね。自分自身はそう思ってないのに、できるのを大前提として言われてきた。できないから聞いたりしているのに。人それぞれに特性があって、それを見られる人が必要だなと思う。自分はそういう特性も少なからず持っているから、多少寄り添いやすいのかなと思う。

大学の友人は優太さんについて「いつもみんなを笑わせてくれる楽しい人です」「仲良くなるときも、男子だから女子だからとかじゃなくて誰に対しても分け隔てなく接しているところがいいなって思うし、大事な存在」と話す。

11 道草ラボ

優太さんはさらに、不登校の子供や同じ悩みを抱える仲間のための支援団体「道草ラボ」を立ち上げた。家庭でも学校でもない「第三の居場所」だ。

  • 甲斐優太さん:
    自分というのを再認識してほしくて。カードゲームでも、弱いカードと思っていたものが実は強かったり、キラキラ光ってなくても強かったりして、負のカードをどう自分が使っていくか。自分もADHDの特性で今こうやっていろんな活動ができていると思っているし。

12 人との交流

本の出版を機に、教育に関心を持つ人との交流も広がっている。

  • 本を読んだ人:
    子供が不登校になったときに「これは義務だから」と言っていたので、「無理強いだったな」と反省した。甲斐くんに出会えてすごく良かった。
  • 本を読んだ人:
    すごく感動した。言葉が持つ力というかメッセージ性がすごくあって、胸に突き刺さるというか。

13 優太さん

優太さんは、生きづらさを抱える人へ「焦らなくていい。自分というユニークな仕様を面白がってくれる場所を、ゆっくり見つけていけばいいのだから」と著書でメッセージをおくる。

かつて"普通"という枠組みの中で自分を責め続けた青年は、今、その枠からはみ出した子供たちの背中を押している。
甲斐さんの挑戦は、生きづらさを抱えるすべての人にとって、明日を照らす小さな灯火となるはずだ。

(テレビ宮崎)

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