宮崎市内海にある日南水産。
海のすぐそばで海鮮料理を提供する人気のお店でした。

おととし9月、台風14号の豪雨によって発生した土砂崩れが店の目の前で発生。
大量の土砂が線路や道路を飲み込み、店に押し寄せ、海水を汲み上げていたポンプが壊れ、伊勢海老や貝などの生き物は全滅。
さらに、土砂に押された店舗は基礎の部分から被害を受けました。

日南水産を経営する 橋口さゆりさんは、土砂崩れが起きる前に避難し無事でしたが、店に戻ってきて目の当たりにしたのは変わり果てた店の姿でした。

• 【話：日南水産 橋口 さゆりさん】
  伊勢エビもなんとか生きていて欲しいなと思ったんですけど、全部ダメでしたね...、一匹も駄目でした‥、辛いです。

土砂は店に隣接する自宅にも押し寄せましたが、橋口さんにとって大切な場所は守られていました。
8年前に病気で他界した橋口さんの夫である健也さんの部屋です。

日南水産は昭和50年に健也さんの両親が海鮮の販売店として創業。
その後、健也さんが食事も楽しめるようにし、多くのお客さんで賑わう人気店となりました。

今は成人している3人の娘もこの場所で育ちました。
長女の沙耶香さんは生まれ育ったこの場所で店の再開を強く望んでいます。

しかし、店を再開するためには大規模な改修が必要と判明。その経費は5千万円以上。
時間と費用がかかる道のりに橋口さんは閉店も考えました。
そんな橋口さんが再び前を向くきっかけとなった一つが、インターネット上で再開のための寄付金を募るクラウドファンディング。
企画したのは亡き夫健也さんの仲間たちでした。

• 【話：健也さんの友人 森 美樹さん】
  私だけじゃなくて皆さんに対しても橋口ご一家はすごくよくしてくださるので。お客さんに接している時が幸せそうなので、たくさんお店にお客さんが来れるお店に復活して「よかったね」と笑える時が来るのを待つしかないなと思っています。

そしてクラウドファンディングで500万円以上が寄せられました。
※現在クラウドファンディングは終了しています

• 【話：日南水産 橋口 さゆりさん】
  主人が後押ししてくれたんじゃないかなって。主人がいなかったらこんな風にはならなかったんじゃないかなって本当に思います 。改めて大好きな人です。

日南水産 臨時店舗をオープン

被害から1年が経った去年9月。
日南水産からほど近い観光施設の一角に土日祝日限定の テイクアウト専門店をオープン。
元の場所で再開すると決めているからあくまで"臨時店舗"だと語る橋口さん。

次女の真耶さんは、お客様からのあたたかい言葉に元気づけられる母親の変化にすぐ気づいたそうです。

そしてもう一つ橋口さんの原動力になっているのが、新たな店の設計図。
資金繰りの目処がつき、止まっていた時計の針がようやく動き始めました。

以前から取引があった仲卸業者・西川産業の西川公浩さんは、橋口さん夫婦とは同級生。
再開するときは店舗を小さくする場合でも付き合っていこうと思っていたと話します。
お店の再開後も、伊勢海老や貝類などを卸してもらうことが決まりました。

店の再開は4月2日に決定

• 【話：日南水産 橋口 さゆりさん】
  前の店の雰囲気もある中で「こういうところ良くなったね～」とか、「味は変わらないね、おいしいね」という言葉、それが一番ですね。
  ここまで来るのに私は再建したいという思いしかなくて何もできなかった中で、私たちにとっては神様みたいな方達がいて、幸せ者だなと本当に思っています。

あの日からおよそ1年半。
まもなく日南水産に賑やかな声が返ってきます。

日南水産（宮崎市内海）
再オープン 4月2日（日）11：00 ～ （食事）
※海を眺めながら味わえる個室有り

台風14号で被災した皆さんへ橋口さゆりさんからのメッセージ

皆さん一人でいろんなことを考えて苦しくなるばかりだと思います。
そんな時は周りを頼る。
「助けてほしい」と伝えてほしい。
寄り添ってくれる誰かがいると思うだけで、不安な気持ちも晴れます。
諦めないでください。
頑張りましょう。