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2024年09月09日
台風10号 突風の爪痕 専門家の見解による被害と復旧への取り組み(2024年09月07日放送)
台風10号が通過してから1週間が経過し、被害の全貌が徐々に明らかになってきました。
今回の台風では、けが人が38人、住宅被害が1176棟に達し、さらに農業や水産業にも深刻な影響を及ぼしました。
特に、農作物では水稲や野菜など合計1221ヘクタールが被害を受け、農業用施設ではハウスの倒壊など約380件の損害が確認されています。
竜巻による被害の広がり
今回の台風で特に大きな被害をもたらしたのが突風です。
県内6つの市や町で突風被害が確認され、気象庁は、7カ所で「竜巻と推定」もしくは「竜巻が発生した可能性が高い」と判断しています。
8月28日から29日にかけて宮崎市内で発生した竜巻は、赤江から柏原にかけて直線的な被害が確認されました。
宮崎大学防災環境研究センターの竹下伸一准教授は、この竜巻が同時多発的に発生したと見ています。
- 【竹下伸一准教授】
赤江の方に調査を進めると、竜巻の音が2回聞こえたという人が増えた。GPSでプロットすると2本の線が見えてきたので、2つあったと考える方が自然だと考えます。
過去にも、1980年に宮崎市と日南市の6カ所で竜巻が確認されているなど、宮崎県は全国で4番目に竜巻の発生が多い地域です。
特に、海側に面した建物が被害を受けやすく、竹下教授は「東側の海に面した住宅には雨戸をつける。雨戸がつけられない場合はカーテンを閉めることで、被害を軽減する効果がある。1カ所穴が開くと、そこを皮切りに屋根が飛ぶことがあるので窓を割らせないのが一番有効。」と指摘しています。
復旧への取り組み
今週から本格的な復旧活動が始まり、宮崎市の清山知憲市長は竜巻被害があった太田自治公民館周辺を視察し、その被害を確認しました。
多くの家屋では屋根が剥がれ、窓ガラスが割れるなどの被害が発生しており、市長は状況を把握しつつ、今後の支援策を検討すると述べました。
- 【清山知憲市長】
道路から見る限りではちゃんと家屋が残っているが、屋根などの損壊が大きいので、状況を把握して支援につなげていきたい。
宮崎市佐土原町 福島地区 の宮城利春さんの家は屋根が飛ばされ、窓ガラスが割れるなどの被害が出ました。
宮崎市は先週土曜と日曜に災害ごみの特別収集を行いましたが、被害が大きかったエリアは回収しきれず、月曜からは宮崎市の職員も加勢して収集しています。
思い入れのある家財道具も捨てる決断をした宮城さんは「 思い出も全部飛んでいくような感じ」と話します。
農業施設でも大きな被害が報告されています。
佐土原町できゅうりを栽培しているシナジーファームでは、29日未明に発生した突風で倉庫が全壊し、農業用ハウスの骨組みが約200本折れる被害が出ました。
9月3日に河野県知事が現地を訪れ、農家の声を聞き、復旧に向けた支援を約束しました。
- 【河野県知事】
大切なのはこれからも農業を頑張っていこうと考えておられる方を、行政やJAなどが一緒に 後押しをすることであろうかと考えております。被害の状況、それぞれの農家の方が考えておられることをよく聞き取りながら、今後の対応を考えていきたい。
支援の広がりと課題
企業や団体にも支援の輪が広がっています。
宮崎市赤江でボランティアを行ったのは、9月1日から宮崎市でトレーニングキャンプを行っている千葉県のプロラグビーチーム 「浦安D-Rocks」の選手たち。突風で飛ばされた瓦やがれきの撤去作業を行い、地域の復旧活動に協力していました。
一方、修理業者の対応には限界があります。
特に瓦屋根の修理業者は数が限られており、問い合わせが殺到しています。
野村瓦屋(宮崎市)では、今回の台風と8月8日に発生した地震の影響で半年先まで予約が埋まっており、修理を待つ家庭も多い状況です。
瓦屋根を手掛ける業者も限られる中、その引き合いの多さに業界全体が追いついていない状況です。
野村瓦屋の野村翔悟社長「弊社としては一切お断りしない。なるべく早く初期対応をするようにしています。」と話しています。
詐欺や悪質商法への注意
災害後には、詐欺や悪質な訪問販売にも注意が必要です。
災害時に必要な物品や修理サービスを装って不正な契約を迫るケースや、公的機関を騙った義援金詐欺も報告されています。
こうした被害を防ぐために、不審に思ったらすぐに警察へ相談することが重要です。