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「料理人が頑張れば漁師さんも頑張れるかな」厄介者のサメを人気者に 熱意の取り組みで漁業被害食い止め地域資源へ
2025年12月26日

近年、増加するサメによる深刻な漁業被害に直面している宮崎県川南町。サメが魚を食い荒らし、仕掛けを切断。漁師たちは燃料代を含め1日で3万円の赤字を出す日も少なくない。この"厄介者"を地域資源として有効活用しようと、漁業関係者や飲食店、行政が連携し、サメを使った新たな商品を開発。漁師を苦しめる存在から町の「人気者」へと変貌させる挑戦が進む。
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深刻化するサメによる漁業被害
宮崎県川南町の川南漁港。

「サメをどうにかしないといけない」と話すのは、川南町漁業協同組合の俵伸二組合長。「資源だからうまく使ってサメを釣っていかないと、他の魚もなかなか釣れない」と、危機感を募らせている。

川南漁港には、はえ縄漁で捕れるマグロを中心に種類豊富な魚が競りに並ぶが、近海ではここ5年ほどでハンマーヘッドシャークなどのサメが一気に増えているという。
その理由について、サメの研究者で沖縄美ら海水族館の佐藤 圭一館長によると、ここ数年は日本全体で比較的海水温が高くなる傾向にあったため、熱帯や温かい海を好むサメが北上した可能性があるという。

サメは漁場の魚を食い荒らし、仕掛けなどの道具も切断。被害は甚大で、燃料代などを含めると1日で少なくとも3万円の赤字が出る日もあるという。サメはアンモニア臭が強く下処理に手間がかかり、値段もつかないことから、漁師の収入にはつながっていない。漁師は大量のサメを海へ戻しているのがほとんどだ。
「厄介者」を「地域資源」へ
そこで2025年1月に町や漁協などが連携協定を結び、サメの活用方法を模索。「どうしたらおいしく食べられるのか」と考え続けた。
川南町漁協直売所「通浜」の勝本雄樹店長は、約1年かけて、湯がき、照り焼きなど30品目の試作を行った。サメ肉の調理について「普通の魚よりさばき方は簡単。骨がなく軟骨が一本しか入っていない。小骨もない」と話す。

そしてたどり着いたのは「サメのフライ」だった。勝本店長は「一番臭みが抜けていたのがフライだった。身がふわふわしていて柔らかいので、フライには最適」と話す。

2025年10月、町と漁協、直売所の4人が県内屈指の観光地・青島にある「AOSHIMAYA」を訪れた。サメのフライを扱ってもらえることになったのだ。宮崎交通店舗開発推進部の福嶋弘樹部長は、当初は疑心暗鬼だったものの、「食べたらおいしい、クセがない。オリーブオイルやバジルソースなど、様々な楽しみ方ができるかな」と話す。

宮崎交通 店舗開発推進部 福嶋弘樹部長:
熱意はものすごく感じた。いろいろな苦悩があって、ここまでたどり着いたんだと思っているので、私どもがその期待にいかに応えるかどうかだと思う。

その結果、「AOSHIMAYA」では12月20日から、アボカドを使ったソースがかかったシャークバーガー(420円)と、海の幸が一皿に乗ったミックスフライ定食(1,980円)の販売をはじめた。
広がる連携と未来への期待
厄介者から人気者へ。そんな川南町の人たちの思いに共感し、フェニックス・シーガイア・リゾートも動いた。

シーガイアと言えば、県外はもとより、国外からも多くの人が訪れる、宮崎を代表するリゾート施設だ。

そのシーガイアで最も収容人数が多いレストラン、ガーデンビュッフェ「パインテラス」では、毎日サメを使った料理が提供されている。

パインテラス 斎賀雄大料理長:
私の出身が川南町で、私も何か協力できないかと思い、今回手をあげた。

考案したのは、衣にニンニクとハーブを使ったオリジナルのハンバーガー。ふわふわのサメの身とサクサクの衣がよく合い、タルタルソースに粒マスタードが入っているので、しっかり酸味も効いていて後味さっぱりだ。

ハンバーガーを食べた人々からは「めちゃくちゃおいしい」「臭みは全くない」「食べやすい」「あっさりふわふわ」といった声が聞かれた。

ハンバーガーを食べた子どもも、「人生初のサメ!」と、新鮮な体験を楽しんでいた。

パインテラス 斎賀雄大料理長:
厄介者でも、僕ら料理人の力があれば美味しくできるのかな、とか、料理人が頑張れば、漁師さんたちも頑張れるのかなと思う。まずは使い続けないと認知もされないので、使い続けて、「ここで食べたサメ美味しかったよね」と広がっていくといいなと思う。

このほかにも、川南町で水揚げされたサメを味わえる店舗は県内で徐々に増えている。木城町の「木城温泉館 湯らら」ではシャークカレー(900円)と川南シャーク定食(1,200円)を提供している。

厄介者から人気者へ。取り組みを続ける人たちの熱意によって、サメが地域資源へと生まれ変わっている。
(テレビ宮崎)











