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「サメはフライにするのが一番」試作30品目でたどり着く 地域資源化で「厄介者を人気者にしたい」タルタルソースのハンバーガーも登場
2025年11月16日

漁業関係者を悩ませている「サメ」が、地域資源として活用される動きが宮崎県川南町で広がっている。マグロ漁が盛んな町だが、近年ハンマーヘッドシャークなどの「サメ」が急増し。漁業被害が深刻化している中、町と漁協などが連携し、「サメのフライ」の商品化に漕ぎつけた。「厄介者」を「人気者」に変える、新たな可能性が広がっている。
【動画】漁師を困らせる"厄介者"を地域資源へ 川南町での取り組み
漁業被害拡大、サメの急増が原因

はえ縄漁でとれるマグロを中心に、種類豊富な魚が競りに並ぶ宮崎県の川南漁港。

しかし、近海ではここ5年ほどでハンマーヘッドシャークをはじめとするサメ類が急増しているという。サメの増加により、漁業への被害が深刻化している。

なぜ、サメが増えているのか。沖縄美ら海水族館の佐藤圭一館長は、近年の海水温上昇がサメの北上を招いた可能性を指摘する。

そんなサメによる漁業被害は深刻だ。漁師歴60年の高谷千秋さんは、漁場の魚を「全部(サメに)食べられる」と話す。さらに仕掛けなどの道具も切断されるため、漁に出ても赤字になる日がほとんど。燃料費などを含めると、1日の赤字は少なくとも3万円になるという。

漁師 高谷千秋さん:
漁師はやっていけない。自分たちは苦しい。
試作30品目、フライが商品化
サメは大量に仕掛けにかかるものの、アンモニア臭が強く下処理に手間がかかり、値段もつかないことから漁師の収入にはつながっていない。そのため、多くのサメを海へ戻しているのが現状だという。

川南町漁業協同組合 俵伸二組合長:
資源だから、うまく使って(サメを)釣っていかないと、他の魚もなかなか釣れない。サメをどうにかしないといけない。

こうした状況を受け、2025年1月に川南町や漁協などが連携協定を締結し、サメの活用方法を模索。

約1年かけて、「湯がき」や「照り焼き」など30品目の試作が行われてきた。そして、2025年4月に完成したのが「サメのフライ」だ。

川南町漁協直売所「通浜」 勝本雄樹店長:
大変でしたね。料理して、どれが一番「臭み」が出るのかな、から始まって...。一番臭みがない、臭みが抜けていたのがフライでしたね。身がふわふわしているので、柔らかい、フライには最適。
食のイベントで好評、可能性広がる

10月、川南町で毎年開催されている食のイベントで、サメのフライを使ったアレンジ料理が販売された。

川南町でゲストハウス「HOSTEL LEASH」を運営する笹川晃代さんが、サメの淡白な味を生かした濃厚なタルタルソースを合わせたハンバーガーを提供。

試食した藤松舞アナウンサーは...
藤松舞アナウンサー:
サメの身がふわふわでしっとりしています。臭みも全く感じないです。

この日用意された200個のハンバーガーはすべて完売し、多くの人が初めて「サメ」を味わった。

川南町民:
おいしい。

延岡市から:
え!フカや!これフカ!

川南町民:
軽いから5個ぐらいいける。

「多くの人にサメを味わってもらいたい」という思いから、10月28日には、宮崎を代表する観光地、青島にある「AOSHIMAYA」を、町と漁協、直売所の関係者が訪れた。

宮崎交通店舗開発推進部の福嶋弘樹部長は、「本当に疑心暗鬼だったが、食べたらおいしい、クセがない。オリーブオイルやバジルソース、フレンチにあうなどいろんな楽しみ方ができる。可能性はかなり広がった。本当に大きなギャップでした」と、サメのフライのポテンシャルに驚きを示した。

AOSHIMAYAはサメのフライの取り扱いを決定し、価格や卸し方についての協議が行われた。協議に参加したシェフは...

青島屋 椎誠副料理長:
手軽に観光客に食べてもらえたらありがたいと思っている。ハンバーガーやホットドック、これからいろいろ挑戦していきたい。
手探りでも、着実に進められてきたサメの活用への取り組みが、実を結びつつある。

川南町 産業推進課 稲田陽介係長:
普通に食卓に並ぶようになるのが理想。川南町に来たらどこでも食べられるとか、宮崎県内どこでも食べられるとかそういった状況になるといい。「厄介者」から「人気者」になってくれるといい。

川南漁協によると、サメによる漁業被害は川南町だけでなく、県内他の漁港でも発生しているという。今後、この取り組みが県内全体に広がり、漁業者の所得向上や海洋環境の改善につながることが期待される。
問い合わせ 通浜ブランド創出協議会事務局 電話0983(27)8011











