番組表
「とんでもない戦力」の技能実習生 制度廃止で転職自由化へ 都市部への人材流出懸念、地域全体の受け入れ体制が問われる
2025年10月08日
外国人労働者が地方でも増加している。宮崎県では8515人と過去最多を更新した。人手不足が深刻化する中、2年後には「技能実習制度」が廃止され、外国人労働者にとって転職が容易な新制度へ移行する。それにともない地方からの人材流出も懸念される。新制度の狙いと課題に迫る。
【動画】国際貢献から人手の確保へ 外国人労働者の受け入れ制度に変化 2年後に導入「育成就労制度」とは
宮崎県の外国人労働者、過去最多を更新
宮崎労働局によると、2024年10月時点での県内の外国人労働者数は8515人に上り、前の年より1419人増加して過去最多を更新した。この外国人労働者を巡る制度は、2年後から大きく変わることになる。現在の「技能実習制度」が廃止され、「育成就労制度」が新たに設けられるのだ。
「国際貢献」から「人手確保」へ
現行の技能実習制度では、外国人労働者は最長で5年間日本に滞在し、農業や製造業などの分野で働くことができた。この制度の目的は、日本の技術を外国人に伝える「国際貢献」であり、実習終了後は原則として母国に帰国する必要があった。
一方、新たに導入される「育成就労制度」では、原則3年間働けば、長期就労が可能な「特定技能」の資格を取得でき、そのまま日本で働き続けることが可能になる。制度の目的が"国際貢献"から"人手の確保"へと明確に転換された形だ。
しかし、この変更は宮崎をはじめとする地方にとって、ある課題を生むと懸念されている。
農業現場を支える「とんでもない戦力」
えびの市でホウレンソウやサトイモなどを栽培する立久井農園では、16人のインドネシア人が働いており、そのうち12人が技能実習生だ。サトイモの掘り起こし作業など、農園の重要な戦力となっている。
外国人労働者の一人は「いい会社。ルールも守っていて、皆さんが優しくしてくれるから、ここで長く仕事をしても大丈夫」と話す。
また、「農業のことを色々知りたい」「トラクターとか色々な機械がある。インドネシアの農業にはあまりない。だから日本に行きたいと思った」と、日本での就労意欲を語った。
立久井農園の立久井義文社長は、外国人労働者について「とんでもない戦力」だと評価する。「国を出て日本で働こうという気概を持って来ているので全く遜色のない人たち」と、その働きぶりを称えた。
県内には、この農園のように外国人労働者を受け入れている事業所が1506カ所存在する。
新制度移行の狙いと地方の課題
技能実習生のサポートなどを行う道休誠一郎さんに、制度変更の背景を聞いた。
道休さんによると、技能実習制度は1993年に法的に確立されたもので、「日本が持っている技術やノウハウを発展途上国の人たちを訓練することによって国際貢献をしていこう、ということを第一義に置いて作られた制度」であった。
しかし、次第に本来の目的から外れ、一時的な労働力として不適切に雇用する事業者が増加。「いろんな業種で賃金の未払い、過酷な体罰を受けた、言葉で差別をされた。そういう問題も起こっている」という。
育成就労制度は、こうした問題を改善するために導入される。特に、これまで原則としてできなかった他の会社への転籍(転職)が可能になる点が大きな変更点だ。
道休さんはこの転職の自由化が、地方では深刻な問題を引き起こすと指摘する。「恐らく、転職が自由になるということであれば、基本的には時給の高い都会へ行こうよ、という流れが起こってくる」と懸念を示した。
実際に、ある技能実習生は「最初に(日本へ)来た時、宮崎がどんなところかはわからない。イメージは東京だけ」と話しており、都市部への関心の高さがうかがえる。
「選ばれる日本」になるために
では、転職による労働力の流出をいかにして防ぐべきか。
立久井社長は、外国人労働者との向き合い方について「(外国人労働者を)自分の子供だと思っている。(日本人と)同等に付き合っていくことが一番大事」と語る。
また、道休さんは事業者だけでなく、地域社会全体の姿勢が重要だと訴える。「受け入れる農家の人たちだけでなく、地域社会が外国人に対して多様性を認めるような文化をどんどん取り入れないといけない。世界の中で選ばれる日本にしなければいけないと私たちは思う」と提言した。
慢性的な人手不足の中、今後ますます増加が見込まれる外国人労働者。制度が転換期を迎えようとしている今、事業者だけでなく、地域全体で彼らを受け入れ、向き合っていくことが重要になってくる。