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精霊「カリコボーズ」の謎に迫る!山村に伝わる恐ろしい存在が今は可愛い公式キャラクターに 村人に語り継がれてきた愛すべき存在

2025年07月12日

宮崎県と熊本県の県境に位置する人口約1000人の小さな村、宮崎県西米良村。ここには「カリコボーズのほいほいくん」という可愛い公式キャラクターがいる。「カリコボーズ」とは西米良村に伝承されている精霊のような存在で、かつては目撃談などもあったが、最近ではあまり聞かれなくなったという。村民の心に根付いている「カリコボーズ」の謎に迫る。
(2022年9月 UMKテレビ宮崎で放送)

【動画】「カリコボーズ」の謎に迫る!山村に伝わる精霊のような恐ろしい存在が今は可愛い公式キャラクター「ほいほいくん」に

宮崎県の険しい山々の中に人々が暮らす、自然豊かな西米良村。

「カリコボーズのほいほいくん」は、1996年に村づくりのイメージキャラクターとして誕生した。

「カリコボーズ」とは、米良地方などで言い伝えられる精霊のような存在で、秋から冬にかけては「山の神」に、春から夏には「川の守り神」になるとされてきた。公式キャラクターの「ほいほいくん」は可愛らしい見た目だが、そもそも「カリコボーズ」の姿は・・・

村民が描いた「カリコボーズ」の恐ろしい姿

カリコボーズを村の公式キャラクターにする際、村では、村民からイラストを募集した。その姿は、宇宙人のようなもの、羽の生えた人間のようなものなど、不気味な物や恐ろしいものばかりだった。四半世紀前、「カリコボーズ」は、村人が恐れる存在だったことがわかる。

「ほいほいくん」とはかけ離れた、恐ろしい姿の「カリコボーズ」たち。実在するのだろうか・・・?

頭に角のようなものをもつイラストを描いたのは、中武正毅さん。

中武正毅さん:
昔いた動物で今いなくなった動物とかいるでしょ、ですから、カリコボーズもいたんじゃないかとは思いますよね。直接会ってひどい目にあったとか、怖い目にあったとかいうお年寄りの話は聞いて育ちました。

中武さんによると、村人が集まって酒を飲むときには、「カリコボーズ」の話でいっぱいだったという。ある人は怖い体験談を。あるい人は自慢話を。「カリコボーズ」の話が出ると、お酒の席は、よりいっそう盛り上がったという。

「山をむやみに荒らしちゃいけない」「そういうことをするとカリコボーズが敵討ちに来るよ」など、山での色々な作法を守ってもらうためにも使われたのではないかと、中武さんは話す。

カリコボーズに「遭遇したことがある」という人がいた。黒木敬介さんだ。

黒木敬介さん:
中学校の時に部活をすませて帰るころ、もう暗くなった夜道。セコ谷というところがあって、ちょうどそこに差し掛かった時に、「ギャー」というような、頭の上を何か通るような...。その途端にもう全身がこわばってしまって、冷汗がだらだら流れて。

黒木さんによると、正体不明の存在は、ずっと「ほいほい」と言いながらついてきたという。黒木さんは、これが村のおじいさんたちが話していた「カリコボーズ」かもしれないと思い、「これは黙っておいた方がいい」と、やっと家まで帰り着いたという。そして黒木さんは夢でも、セコ谷周辺を通る夢を見るという。よほど怖い体験だったのであろう。

村所八幡神社の宮司・濱砂誠二さんも、不思議な体験をしたという。

村所八幡神社・濱砂誠二宮司:
車のドアが閉まって、社務所の前まで誰かが歩く音がしたんですよ。そして社務所の中から神楽笛の音がし始めたので、誰か来たのかと思って、他の人が見に行った。そうしたら社務所には誰もいなくて、最初に部屋に入った2人が、光が天井をぐるぐると2回ぐらい舞って消えるのを見た。

それは、さぞかし怖かったのであろう、と思いきや、濱砂さんはあまり驚かず、「あ、カリコボーズだ!」というだけで、驚きはなかったという。なぜなら、昔からカリコボーズの話を聞いていたからだという。また、神社のすぐ横には、「カリコボーズの通り道」と言い伝えられる道も存在する。それだけ、「カリコボーズ」は身近な存在だったということなのか。

カリコボーズと人々の関係性の変化

人々に自然への畏敬の念を抱かせながら、時に身近な存在として親しまれ、語り継がれてきた「カリコボーズ」最近では遭遇したという話も聞かれなくなってきた。

村所八幡神社・濱砂誠二宮司:
アスファルトの道が通って、山が開けてきた。車、トラックがどんどん通るようになりましたから、カリコボーズの住処が無くなったんじゃないでしょうか...

米良地方の民俗に詳しい宮崎大学の講師、鈴木良幸さんは、こう解説する。

宮崎大学講師・鈴木良幸さん:
我々の自然の捉え方というのは、非常に大きく変化したと思う。自然の中から恵みを得て、自然と関係する中で生活をしていくということ自体が少し忘れ去られてしまって、カリコボーズという関係性も変化し始めているのかなと思う。

山間部では今、限界集落などの問題もあり、こういった伝承を残すことが難しくなってきているという。

村所八幡神社・濱砂誠二宮司:
寂しい気はするが、本当に居たら、今でも出てきたら、面白いでしょう。自分たちが話してあげないともう無くなりますから。自分が生きている間は言い伝えていきたい。

山での暮らし、自然との共生の中で存在してきた「カリコボーズ」。自然との関係が変化する中においても、村人たちが語り続けることで、西米良の人々の心にこれからも生き続ける。

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