番組表

2025年05月19日 18時45分
大手食品メーカーと共に…希少なぶどう山椒の産地化めざす 日之影町などで栽培本格始動
宮崎県椎葉村の民謡「ひえつき節」
19日は、この歌詞の冒頭に登場する山椒に注目します。
農林水産省の2022年の統計によりますと、山椒の生産量は和歌山県が1位で、2位が高知県などとなっていて、宮崎県は実は出荷量が少なく統計自体がありません。
こうした中、大手食品メーカーと高千穂町のしいたけ生産者などが協力して、県北部の山沿いを山椒の産地にしようというプロジェクトが動き始めています。
(ハウス食品グループ本社の担当者)
「すでに葉っぱからオイルが柑橘のすごいさわやかな香りがします」
ぶどうの房のように実る黄緑の粒は「ぶどう山椒」です。
山椒は、独特のしびれとさわやかな香りが特徴で、ウナギの蒲焼をはじめ日本食に欠かせない香辛料の一つです。
この山椒の新たな産地を作ろうと、大手食品メーカー・ハウス食品グループ本社などがプロジェクトを立ち上げ、3年前から日之影町などで試験栽培を行っています。
(ハウス食品グループ本社調達戦略部 小坂修部長)
「順調に成長している印象です」
「日本の代表的な産地の仲間入りをされて、山椒のブランド化が図れ、地域の活性化につながればいいと考えている」
山椒栽培の担い手として白羽の矢が立ったのは、原木乾しいたけの生産者たちです。
乾しいたけは収穫時期が春と秋で、ぶどう山椒の収穫時期となる夏は閑散期。
新たな収入源の確保につなげようと、しいたけの集荷・販売を行う高千穂町の「杉本商店」が地元の生産者に参加を呼びかけてきました。
(杉本商店 田崎文章課長)
「山椒を栽培することによって収入が増えて、その資金でしいたけ栽培にもつながっていく」
「産地としても守られることにつながると考えます」
(試験栽培に参加する障害者就労支援施設・フラワーパークのぞみ工房 池田尚弘さん)
「年間を通して、いろんな作業があって、またそれが(利用者の)工賃につながっていく。サイクルに入ってくれたらいいと思う」
試験栽培には現在、高千穂町や日之影町など北部山沿いの6つの町と村と熊本県の2つの町のあわせておよそ50戸が参加。
山椒に詳しい南九州大学の前田隆昭教授から栽培の候補地や植え方などについて助言を受けながら、ようやくこの夏に初めて収穫できる見込みとなりました。
(南九州大学 環境園芸学部 前田隆昭教授)
「もともと山椒は山間地で栽培されているものですので、宮崎県の山間地は栽培に適した土地だと考えられます」
「山椒の栽培も今後、拡大していけるのではないかと考えている」
今後は、栽培方法や乾燥方法を検証しながら毎年1000本山椒の苗木を植えて、2年後から本格的に販売することを目指しています。
乾しいたけの閑散期に山椒を栽培する新たな取り組み。
プロジェクトに参加する杉本商店によりますと、乾しいたけの乾燥機を山椒の乾燥にも活用できる見込みで、初期投資が抑えられることもメリットだということです。
生産者の高齢化や天候不良などにより生産量が減少する中、しいたけと山椒を一緒に栽培することで相乗効果を生み出すと期待しています。