小さなときめきが導いた、人生の分岐点【宮崎で輝く女性特集#5】

小さなときめきが導いた、人生の分岐点【宮崎で輝く女性特集#5】
女性の働き方についての記事は良くあるけれど、都会の話だしどこか他人事に感じてしまい共感できない…。こんな経験はありませんか?

MONE編集部では永井友梨さんをインタビュアーに迎え、ここ 宮崎で様々な分野で活躍している女性のリアルな姿を紹介します!
取材・文:永井友梨
撮影:MONE編集部
連載5回目に登場いただくのは
「アントモさん」。

石川県生まれ、宮崎育ち。電機メーカー、アパレル、ブライダル、百貨店での販売職など多彩な経験を経て、現在はあんフラワー、練り切りの講師として活動する。調理師免許、フードコーディネーターの資格を持ち、宮崎を拠点に対面・オンラインレッスンを展開。餡で作る和菓子を通して「作る喜び」と「自分に自信を持つきっかけ」を伝え、国内外に多くの生徒を持つ。

SNSで偶然出会った“あんこの花”。その小さなときめきが、人生を大きく動かしました。
遠回りに見えた経験が、
「私らしさ」を探す旅だった

電機メーカーでの勤務を経て、アパレルやブライダルなど人と接する仕事に携わったアントモさん。ブライダルの仕事をしながら夜間で調理師専門学校に通い、調理師免許を取得した。

「作ることも、食べることも好きだったので、きちんと学んでみたかったんです」。

当時は陶芸にも熱中し、自作の器に料理を盛り付けたいという思いもあったが、飲食で生計を立てることはとくに考えていなかった。 その後、外資系ブランドの社員として百貨店に勤務。10年以上販売の現場に立つ中で多くを学ぶ一方、次第に心に違和感が芽生えた。

「決められた言葉や対応を繰り返す中で、“これ正直、私じゃなくてよくない?”って思い始めたんです」。

役割を全うするほどに、「自分らしさ」や「私にしかできないこと」が、少しずつ見えにくくなっていった。

SNSで偶然出会った
“あんこの花”

転機は、何気なく眺めていたSNSだった。

「インスタを見ていたら、あんフラワーっていう“あんこで作ったお花”が飛び込んできて。“何これ?”ってなったんです」。

ものづくりが好きだったアントモさんの心を、あんこの花は一瞬でつかんだ。講師に直接DMを送り「習わせてください」と行動に移す。京都で学び、資格を取得。さらに白あんつながりで練り切りにも出会い、「白あんでこんなに自由で芸術的な表現ができるんだ」と可能性を感じ、今度は神戸へ足を運んだ。

「SNSを見て終わる人も多いと思うけど、あの時一歩踏み出したから何か人生変わったのかなって思います。」
仕事を続けながら準備した、“踏み出すための土台”

あんフラワーや練り切りを学び始めた当初は決して簡単な道ではなかったが、確かな達成感があった。仕事を続けながら学べたことも、アントモさんにとって大きかった。

「もし仕事を辞めてから始めていたら、不安で動けなかったかもしれない」。

生活の柱があるからこそ学びに集中でき、少しずつ自信が積み重なっていった。 趣味として続ける道もあったが、自分の可能性を広げたくなったという。

「このままここで定年を迎えていいのかなという思いが大きくなったんです。使うかどうか分からなくても、取れる資格は取っておこうっていう気持ちで準備していたんだと思います。」
コロナ禍が教えてくれた、
安定のもろさと決断の時

決定的な後押しとなったのが、コロナ禍だった。

「これまでの日常が普通じゃなくなりましたよね。百貨店から人が消えて、安定だと思っていたものが、一気に不安に変わった感覚でした」。

だからこそ、自分のやりたいことはもうこのタイミングしかないと思えた。

「まわりからは、コロナ禍のこのタイミングで起業するの?って結構言われました。でも、もし新型コロナの流行がなかったら、私はきっと安定を選び続けていたと思います」。

そうして百貨店勤務に区切りをつけ、自分の道を歩み始めた。

和菓子から生まれる、
幸せの連鎖

アントモさんが何より大切にしているのは、技術そのものよりもその先にある時間だ。

「生徒さんが自分で作ったもので、家族や大切な人を笑顔にできるんだよっていうのを伝えたくて」。

仕事や日々の役割に追われ、頑張っているのになかなか褒めてもらう機会がない女性たちが教室を訪れることも多いという。

「自信がなかったり、“自分って言ったらこれ”っていうものがない方が多く来られるんです」。

そんな生徒たちに、作る楽しさとともに伝えているのが、作って人を幸せにできる力があるということ。

「それに気づいて褒められることが増えてくると、皆さんどんどん変わってくるんです。私は技術も伝えているけど、いちばんは自分自身に自信を持ってもらいたい」。

さらにオンラインを通じて、宮崎から全国、そして海外へ。和菓子をきっかけに人と人がつながり、幸せが連なっていく世界が、今、静かに広がっている。

感性を整える、
レッスン後のひと呼吸

1日のスケジュールの中でアントモさんが何より大切にしているのが、レッスンを終えたあとの“お茶時間”。

「レッスンが終わったら、コーヒーやお茶を淹れて、好きな器を出して、甘いものを食べる。少しゆっくりする時間を必ず入れています」。

社会人時代にはなかなか取れなかった“区切り”の時間が、気持ちの切り替えを自然に促してくれる。このブレイクタイムは、ただ休むだけの時間ではない。

「次に作りたいものを考えたり、ふっと浮かんだデザインをメモしたり」。

練り切りの“意匠”デザインは、こうした何気ないひとときから生まれることも多い。ぼーっとしながらも感性を巡らせ、暮らしと仕事が心地よく溶け合う時間となっている。

今後の目標は「宮崎から、小さな幸せの輪を広げたい」
「宮崎の女性に、練り切りやあんフラワーの楽しさをもっと伝えたい。作ることで自分を癒しながら、自己肯定感を上げてほしいんです」。

自分の手から小さな幸せを生み出せる——その実感を届けたいという思いがある。近年は、生徒が販売やワークショップ、教室を始める例も増え、昨年からはサポートにも力を入れている。実際にオンライン受講をきっかけに和菓子講師を目指し、人生の進路を変えたという生徒も。

「正直びっくりして心配もあったんですけど、先生との出会いで決断できたと言われ、あとは全力でサポートするだけだと思っています」。
宮崎の女性に
伝えたいメッセージ
「小さな一歩」が人生を動かす
「勇気を出して一歩踏み出せない人が多いけど、小さいことでいい。興味があることは、まずやってみてほしい」。

それは大きなことでなくていいとアントモさんは力を込める。

「お菓子を作って人に渡して喜んでもらえた、そんなことで“自分は人を笑顔にできる”って気づいてほしい。宮崎の人は控えめな印象があるけど、誰でも必ず可能性はあると思うんです。」

その可能性に気づくためには、環境が大切だという。

「自分らしさをつかめる場所に飛び込んで、夢中になれるもの、自分といえばこれ!というものを見つけてほしいと思います」。
アントモさんの作品

≪取材協力≫

この記事を書いた人

【アンバサダー】永井友梨

美容アドバイザー(スキンケア)兼フリーアナウンサー。テレビ宮崎の局アナを経て、現在も番組等に出演。
宮崎市出身。

Instagramアイコン
このライターの記事を読む

Pick up

Read More