一杯に想いを込めて。出会いを糧に切り拓く未来【宮崎で輝く女性特集#3】

一杯に想いを込めて。出会いを糧に切り拓く未来【宮崎で輝く女性特集#3】
女性の働き方についての記事は良くあるけれど、都会の話だしどこか他人事に感じてしまい共感できない…。こんな経験はありませんか?

MONE編集部では永井友梨さんをインタビュアーに迎え、ここ 宮崎で様々な分野で活躍している女性のリアルな姿を紹介します!
取材・文:永井友梨
撮影:MONE編集部
連載3回目に登場いただくのはバーテンダーの緒方唯さん 34歳。

宮崎県内の高校を卒業後、フェニックス・シーガイア・リゾートに入社。ホテル内のバーに配属されたことをきっかけにバーテンダーの道へ。国内外の大会に挑戦し続け、Wine&Bar麦家に在籍時の2022年、オーストラリアで開催されたバーテンダーの世界大会「DIAGEO WORLD CLASS GLOBAL FINALS 2022」に日本代表として出場し、部門優勝。現在は宮崎市内に自身のバー「Tie&Loose」を構え、地元の素材を使ったカクテルを発信している。

写真提供:緒方唯さん
思いがけず出会った仕事で世界の舞台へ。
宮崎で描くこれからについて伺いました。
希望とは違った配属先が、人生を大きく変える転機に

高校卒業後、特に理由も無くホテル業界を選んだ緒方さん。

「本当は温泉の受付を希望していたんです。でも料理部に配属され、2年目にたまたまバーラウンジに異動。それがバーテンダーとしての始まりでした」

最初は不安も大きかったが、カウンター越しにお客様と向き合い、お酒を通じて喜ばれる瞬間に心が動き、次第に「もっと極めたい」という思いに変わっていった。
振り返れば、偶然の配属こそが人生を大きく変えた分岐点だった。

反対していた家族も、今では大切な支え

スキルアップのため、ホテルから街のバーに進出しようと決心した緒方さん。
両親の反応は…

「水商売なんてやめろ、と父に強く反対されました。もともと厳しい両親だったうえに、あまり外に飲みに行く習慣がなく、バーという空間のことをよく知らなかったのだと思います。」

説得には1~2年ほどかかったという。
日本一を取ったらいつか飲みに行くと言ってくれた父は、緒方さんが全国大会に出場した際、母と姉と応援に駆けつけてくれ、それからバーに飲みに来てくれるようになった。今では家族が一番に応援してくれる心強い存在だ。

人とのつながりや新たな役割。世界一の称号が広げた新しい舞台

街中にあるWine&Bar麦家でバーテンダーとして次のステップを踏み出した緒方さん。

そのきっかけとなった尊敬するバーテンダーが辞めることになり、離客を防ぐために実績を積もうと様々な大会に挑戦。
2022年、バーテンダーの世界大会「DIAGEO WORLD CLASS GLOBAL FINALS 2022」に日本代表として出場し、タンカレーナンバーテン部門で見事部門優勝を果たした。

「自分に自信がつきましたし、周りの反応がガラッと変わりました。」

SNSのフォロワーが急増し、交流は海外にまで広がった。県外ホテルでのカクテル監修など、新しい仕事の依頼も次々と舞い込むように。

「今までは自分が頼る立場だったんですけど、今では頼ってくださる方がすごく増えて。年齢を問わず声をかけてもらえるようになりました」

一気に広がった活動の場。次の世代に挑戦の楽しさとバーテンダーの魅力を伝えていくことが、世界一を経験した彼女の新しい使命だ。

家族の応援に支えられ…自分の店を持つという次なる挑戦
「バーテンダーは、いつかは結婚して辞めるんだろうなと思っていました。でも大会での優勝後仕事の幅が広がり、自分の店を持ってみたいという思いが芽生えました。」

不安はあったが、家族や周囲の応援が背中を押した。特に夫の存在は大きかったという。

「主人が私の気持ちを尊重して後押ししてくれたことが、独立のきっかけでした。準備も一緒にしてくれて、自分の仕事をしながらもアルバイトがいないときは手伝ってくれていて感謝しています」

独立は想像と違う大変さもあるが、それ以上に楽しさが勝る。今では夫婦で今後の仕事の話やイベントの構想を語り合いながら、新しい未来を描いている。

素材に恵まれた宮崎で、カクテル文化を広げたい
「宮崎って本当に素材に恵まれているんです。焼酎はもちろん、マンゴーや日向夏、へべす…どれもカクテルに活かせる特別な食材ばかり。」

そう語る緒方さんが拠点を宮崎に置き続けるのは、ふるさとへの愛と、地元だからこそできる表現があるから。そんな中、宮崎はスナック文化が根強くカクテル文化が浸透しにくいという現実も感じている。

「スナックの温かさも素晴らしい文化。その一方で、一杯を一生懸命考え、手間をかけて作っているバーテンダーという職業があること、カクテルの価値をもっと広げるのが、自分の新しい課題だと思っています」
夜の仕事だからこそ大切にしている、自分に合ったリフレッシュと暮らし
「19歳からずっとバーテンダーをしているので、逆に昼間の仕事は想像できないんです」

リモート勤務の夫も一緒に夜型の生活を送っているという緒方さん。帰宅後に翌日のご飯を仕込むことも。

「ご飯を作るのは嫌いじゃなくて、夜中に黙々と仕込みをする時間がストレス発散になっています」

またリフレッシュの時間も欠かせない。休日には県内外へ足を運び、美味しいものを食べに行くことが何よりの楽しみだという。

「食べ歩きが大好きで、そこからカクテルの発想が生まれることもあります」

さらに30代を迎えてからは、ライフスタイルの考え方も変わった。

「昔より体力の衰えを実感することもあるけど、無理をせず自分の体に合った生活をしようと思うようになりました。働くときは全力で、休むときはしっかり休む。そういうバランスを大事にしています」

自分に合ったリズムが、今の挑戦を支えている。

今後の目標は「Asia’s 50 Best Barsのランキング入りと宮崎でカクテル文化を浸透させること」
「数年後、このお店が年に1回発表されるAsia’s 50 Best Barsにランクインされることが今の目標です。それに見合うよう、カクテルだけではなく来てくれるお客様が気持ち良く過ごせるようサービスを磨かなければと思います。」

同時に、緒方さんは宮崎でカクテル文化を広めることも自身の使命だと考えている。

「お店では毎月、国内外で活躍されているバーテンダーをお招きしてゲストバーテンダーイベントを開催しています。世界チャンピオンや海外バーテンダー等のカクテルを楽しんでいただいて毎回ご好評いただいておりますが、今後はカクテルパーティーも開催したいと思っています。私がこれまでの大会やイベントなどで出会えたトップバーテンダーの方々に宮崎に集結していただき、宮崎の方に新しい、世界レベルのカクテル体験をしていただきたいです。それは今まで宮崎では無かったことだと思いますし、私ができることで宮崎に貢献できればと思っています。」
宮崎の女性に伝えたいメッセージ
自分のやりたいことに自由に挑戦してほしい
「私も今までやりたいことをずっとやらせてもらってきました。女性はとくに家事や子育てで忙しいことが多いと思います。でも、その時に“やりたい”と思ったことは挑戦した方がいいことなんじゃないかなと思うんです」

緒方さんは、女性が家の中にいる時代ではなくなり、仕事でも趣味でも友達と遊ぶことでも“外に出たい”と思ったら自由に選べる世の中であってほしいと願っている。

「もちろん失敗することもありますが、大変なときや困ったときは周りに助けを求めて、頼ってもいいと思います。これから益々女性も活躍できる世の中になればと思います!」

緒方さんが経営するバー「Tie&Loose」の店内

≪取材協力≫

  • 店名:Tie&Loose
  • 住所:宮崎県宮崎市中央通2-28 カテイ堂ビル 3F
  • 電話番号:0985-40-2358
  • 営業時間:19:00 – 25:00
  • 📷 Instagram:@tie_and_loose@yuiyui.1028

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